ハッピードムドム by完全にノンフィクション 小野恭介

完全にノンフィクションというバンドのドラムスでございます。バンドのことをより楽しんでもらえればハッピーです。ドムドム。

ワンシーズンに一回くらいしかブログ書いてへんやん 〜夏編〜

  完全にノンフィクションは夏の曲が多い。完全にノンフィクションというバンドを知っている人のなかで夏のイメージを持っている人はどれくらいいるのだろう。別所君は日本を代表する夏のバンドであるTUBEが好きで二十代前半の頃はしょっちゅうドライブをして、車を運転しながらTUBEをかけていた。
「夏のバンドになりたいわー」
  とよく言っていた。当時日本の夏の暑さは年々増していくようで、元々極度の汗っかきであるぼくは夏を敬遠しがちだったがTUBEを聴いている間は夏がありがたいもののように感じられ、TUBEの音楽はTUBEに対してでなく夏に対しての敬意を促す。そしてTUBEの存在はむしろ季節や自然の恩恵の側になっていた。
  ぼくは年々夏が好きになっている。別所君の見ている夏が、ぼくにも少し見えるようになった気がする。夏へと注いでいる愛情のカタチというか気配というか、在り方がぼくのなかにも存在し始めているのかもしれない。だけれどもすべては気まぐれかもしれなくて、そんなこと関係なく完全にノンフィクションの音楽は夏をやる。

真夏の公園
アイスキャンデー
28℃
DRUNK DAYS
たまに浴衣美人
2015年感覚

  ちょっと思い出しただけで夏の情景を描いてるとはっきりわかる曲がこれだけある。
  でも、ぼくには他の曲も夏に見える。
  MUSESSOU COMMUNICATIONという曲に出てくる、「それでも街は水色」という歌詞はデモを聴いたときにブワァと夏の街の風景、頭の中で大阪のキタのオフィス街が夕日を浴びていた。2/3ノンフィクションの「屋上カメラが映し出す映像」も夏だ。「午前中の東住吉区」も夏だ。「嫌んなったって月火水木金土日!」も夏だ。「西日が向かいの団地に反射して眩しい。」のも夏だ。「みんなで見れたらいい。」のも夏の風景だ、と思う。多分。
  書いた本人が頭の中でどこまで具体的な風景を描きだしているか、そして聴き手に描きだしてほしい風景がどこまで具体性を必要としているか、曲ごとに問い合わせれば多分答えてくれるだろうけれどここは音楽の楽しみ方の一つとして、勝手に想像させてもらおう。飛田新地の「青空を阪神高速がぶった斬る」は文句なしに名フレーズだと思う。ここには視界に映る夏のはっきりとした色合いがある。見上げた空と、阪神高速はとけ合わない。町の違和感と頭上を湾曲して通る阪神高速が異物としてそこに在る様子が夏の午前中の光のなかにくっきりと浮かぶ。そして、歌詞だけでなくそういった夏のイメージはサウンドによっても喚起される。
  ギターの音色。完ノンのギターの、ほどよく歪んだ音や広がりのあるリヴァーブは視覚イメージだけでなく時には匂いや肌の感覚まで刺激する。真夏の公園でずっと鳴ってる音は夏中耳にしている蝉の鳴き声のようだ。そしてアイスキャンデーの冒頭のあの音。歌詞にある、「花火大会終わって家に着いた時に優しいクーラーの涼しさ」もそうだが、それを思い出しているベランダで食べているアイスキャンデーの冷たさやそこに吹く夜風の涼しさが肌を包む。ぼくは夏の暑い日に外を移動しているとこの曲が聴きたくなってウォークマンだったりライブでやった時に録音したものだったりをかけて涼をとる。暑いから、コンビニに立ち寄ってアイスキャンデーを買って食べるみたいに、暑いからアイスキャンデーを聴こうと思う。クーラーの効いた屋内に入った時のように、涼しい、と錯覚する。風鈴の音色なんかを軽く超えていく。そこにはどんな季節だろうと頭の中に夏があり、常に夏に照準を絞った生き方をしてきた別所君の身体性が反映されている。そんな人はTUBE以外になかなかいない。冬もいいよね、なんて言ったりしない。TUBEにも冬の曲があるように、完ノンにも秋や冬を感じさせないでもない曲は何曲かある。別所君は本当は秋も好きだ。ただ、飛び抜けて一番夏が好きなのだ。
  ぼくが言えることの一つとして、夏が先にあるからTUBEがあり、完ノンもそこに属している。別所君はTUBEみたいになりたくてバンドをしたわけではなくて、夏があるから夏の曲を書く。夏を表現しようとすることもあるし、勝手に夏になっていたこともある。音楽はどこかから降り注いだりするしふいに何かと響き合う。身体の内側から湧き起こる何かは身体の外側と無関係なわけがなく、心と世界は表裏一体である。ぼくは四季がある場所で夏をありがたがっている。ありがたがれる喜びを教えてくれるTUBEや完ノンにとても感謝しています。


  最後に豆知識というか、
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 驚愕の事実ですが、 完ノンのCDジャケは実はリバーシブル仕様でした。
  お好みに合わせてご使用になれます。ライブ会場の物販にて販売してますのでよろしくお願いします。

  完ノンの次のライブは9月です。9月というとまだまだ暑いですが夏感は少ない。だけども夏を感じる曲は、聴くことによって夏を終わらせることもできる。9月の夜に夏を継続させるか終わらせるかはあなた次第。お待ちしています。


ドラム  小野