ハッピードムドム by完全にノンフィクション 小野恭介

完全にノンフィクションというバンドのドラムスでございます。バンドのことをより楽しんでもらえればハッピーです。ドムドム。

夏の思い出

  こんなにも夏が終わっていくのをさみしいと感じる人間になるなんて思いも寄らないことだった。これは完全に、完全にノンフィクションに在籍していることによる影響だ。

  季節では僕は秋が一番好きだ。それは今も変わらない。そう簡単に一番は変わらない。だけどこのまま完全にノンフィクションが続けば、僕の一番好きな季節が夏になることは充分にあり得ることだ。ひょっとしたら来年あたりそうなっている可能性もあって、ごく自然なことのようにも感じて、でもそれはやっぱりどこか自分に嘘をついている。最近あまり物事を深く考えないように、考えなくて済むように動いていて、それは良くないんじゃないかと思う。それは技術だから、心のどこかは圧迫されてる。昔より馬鹿になった気がする。

  少年のように考えてみることにした。少年の時の発想なんてもう出てこないけれど、少年の考えている時の密度で物事を捉える。季節はきっと捉え方を左右するだろう。季節や気候に左右されながら少年の密度で物事を見つめてみる。昔、届きたいと思っていた感覚やなりたかった自分が霞の向こうにいる気配。それぞれ季節の良さがそれぞれに一番だというのは当たり前なことで、だから一番好きな季節とかどうでもいいけれど、夏が好きだと言いたい。夏が嫌いで完全にノンフィクションのいい音が出せるわけがない。

  七月、夏になってきた頃にワンマンをして、八月末の夏の終わりを噛みしめながら三本もライブをした。僕にとっては間違いなく夏の思い出だった。完全にノンフィクションはどうだろうか。バンドは生きている。バンドが出している音は音だから目で見えないけれど目以外で見ている。耳や身体に伝わる振動で見えてくる。音からイメージが湧く。僕にはそれぞれ得体のしれない生き物が動いているように見える。バンドごとに顔や形が違う、音を具現化したオリジナリティ溢れる容姿をしたバケモノ達。で、完全にノンフィクションの音の奴、今年の夏はたくましく精悍になった。こいつはまだまだ成長する、と音が遊ぶ姿を見ていて思った。成熟したらもう出せないものもあるんだろうけど、今はまだどっちもある。エネルギッシュさも、大人らしさも。今、完全にノンフィクションが出している音はきっと今だけです。今!